
はじめに
『SUNNY 強い気持ち・強い愛』という映画をご存知でしょうか。
広瀬すずと篠原涼子のダブル主演です。
完成披露試写会にはこのパッケージに載っている女優で小池栄子さん以外は出席するほど、熱を入れていたのですが、興行成績は2018年度公開の映画でも56位?。興行収入も9.2億円とあまり芳しくない数字であり、爆死とも称されてしまっている映画です。
ネットでも「面白かった!」という声もあれば、「つまらなかった」という声もありました。
私としてはとても面白く鑑賞したので、とても悲しく、悔しいですね。
さて、どうしてこのような賛否両論になり、ヒットしなかったのでしょうか。
(この記事は一部ネタバレがありますので、鑑賞してから読まれるのをお勧めします)
SUNNYの魅力
人生を生きていく上で、ノスタルジーに浸ることがままあると思います。
中学高校のアルバムを開いてみたり、昔流行っていた音楽をyoutubeで検索してみたり…
人はなぜノスタルジーに浸るのでしょうか。
私は昔よりもこの現在の方が生きづらいと思う人が多いからではないかと考えます。
年を経る毎に社会も私たちも変わるのです。
サラリーマンをしていれば、年々責任も仕事の難易度も上がっていきます。
加齢により肌の張りも失われ、徹夜もできない体となります。
子供の世話などをしていると自分の時間は取れなくなります。
昔の方が例えお金はなくとも、自分を取り巻くしがらみはなく楽しいと感じることができたはずです。
少しだけ立ち止まって目をつぶり、目の前の現実から遠のいてみて、かりそめの幸福感に浸るような役割がノスタルジーにはあります。
この映画は「ノスタルジーに浸らせる魔法」のようなものです。
1980年付近に生まれたものとしては、思春期真っただ中だった1990年後半の自分に浸らせる仕掛けがたくさんあるわけですよ!
例えば
- 小室哲哉の音楽(まさに1990年代だ)
- コギャル(懐かしいですね!)
- 写ルンです
- LALALAラブソング(ロンバケだ!)
- EGGっていう雑誌
- 安室奈美恵(ちょうど引退するタイミングでこの映画を出してきた)
あの頃にはあって今にはないものを出してきて、なつかしさを感じさせます。
そこにあの頃誰もが味わったであろう甘酸っぱい思い出(例:初恋、そして失恋)と更にミックスさせることで昔に立ち戻らせるのです。
映画を楽しむよりも懐かしい気持ちに浸れるってだけで私自身は非常に満足でした!
しかし、ここにヒットできない悲しい要因も潜んでいるわけです。。。
爆死理由①パイが少なすぎた
この映画はいかに1990年代後半を「懐かしくていいなぁ」と感じさせるかにかかっているのですが、下の図をご覧ください。

この映画のノスタルジーは1980年生まれを頂点にして、一気に下がっていってしまいます!
今子供の観客だとこの映画は最早異世界でしかなくて、なつかしさが売りなのに感じてもらえないわけです。
また、今60歳の人とかだと違う理由で無理ですよね。1990年代後半だと当時40歳くらいでしょうか。そうなるとちょうど娘がガングロにして毎日家に帰ってこないとか…
つらい気持ちがよみがえるだけ!
になるので、映画の魅力が逆にトラウマを呼び起こす可能性すらありました!
その点、同じ構造である 「ALWAYS 3丁目の夕日」は凄いと思います。
あの頃の牧歌的な社会は誰もが懐かしさを覚え、年代的にパイも非常に多いので観客も見込めます。

爆死理由②ぶりたに
映画に出てくるキャラクターに「ぶりたに」という女子高生がいるんですね。
主人公と敵対するグループなんですが、あんまり可愛くなくちょっといじめっ子なんですが、コミカルな感じなんです。
例えば、ぶりたにが喧嘩を売ってきたが、主人公の広瀬すずがキレてお好み焼きを顔面に投げつけたら半べそになって逃走。とか
で、その子が映画の最後の方で
「ともらちになってくれるっていったらーん?」
と完全に薬物依存な状態を見せてくれるというドン引きのシーンをお届けしてくれます。
確かに話の展開上、仕方がないんですよ!あんなに仲が良かったのに、離れてしまった主人公たち。それ相応のエピソードがある必要があるわけです。
ただこの突如不気味にラリった人が登場、というのは
ノスタルジーに浸って無防備だった人たちのみぞおちに強烈な一撃を与えるんですね。。。
今まで1990年代後半あるあるネタで攻めてきたのに、同級生が覚せい剤で、っていうのは非常にないないネタなんですよ。いくらなんでも!
ここら辺、もう少し何とかなんなかったのかなというのはあります。
こう書いてきましたけど、やっぱりこの映画は好きで、映画の後、DVDレンタルが開始されてからは再度鑑賞しました。
結論としては1980年付近の人には面白いし、それ以外にはつまらなく思われてしまうことが原因であったと考えます。
私としてはこのような特殊な時代を切り取った映画は珍しいと思うので、おすすめします!
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